富山県高岡市、南砺市および東京藝術大学は平成27年度かtenrankaiら、産学官連携で国宝法隆寺釈迦三尊像(以下、「釈迦三尊像」)の再現に取り組んでいます。
今回、門外不出の釈迦三尊像を限りなく科学的に同質なもので複製することにより、日本の芸術文化、地域の伝統技術の継承や、歴史的美術工芸品の未来の復元技術の発進につなげていきます。
この完成した再現仏を、富山県高岡市で開く展覧会「法隆寺 再現 釈迦三尊像展 – 飛鳥が告げる未来」〔3月10日(金)~20日(月・祝)〕にて初公開することとなりました。
展覧会では、再現された釈迦三尊像と台座、金堂壁画(東京藝術大学で再現制作)を法隆寺の金堂に近い配置で展示するほか、3Dプリンターで制作された原型、鋳造工程で使用された石膏型なども展示します。
実際の法隆寺では金網越しの拝観となり、像の後方を見ることもできませんが、この展示では釈迦三尊像の再現物を2mの距離で拝むことができ、像の裏側の銘なども見ることができる、貴重な機会となります。
飛鳥が告げる未来
伊東順二(本展キュレーター・東京藝術大学社会連携センター特任教授) 誰をも驚かせる美の前では、例え文化は違えども誰もが言葉を失くし、ただ感動に身を浸す。それは造形の力でもあり、時間を超える崇高な力でもある。 そのような美を持つ法隆寺釈迦三尊像は日本を一つにして現在のような独自な文化と平和な思想を持つ我が国の基盤となった飛鳥時代に未来をデザインした人々の努力と知識と汗の結晶である。
もともとこの像は仏教の日本への布教を強力に推し進め日本人の心の拠りどころとし、人心を安定、同時に大陸の文化を積極的に導入、律令制国家の礎を築いた聖徳太子の病気平癒を祈願するために日本最初の仏師と言われる鞍作止利が制作を委嘱され太子の没後625年に完成したものである。その姿は止利様式と呼ばれる大胆で簡素な造形が醸し出す規律ある美と無限を思わせるような慈愛に満ちていて見る者を感動と太古への追想に誘う。そしてその美しさは、鋳造の銅の厚みの均一性や鉄心の抜き取りなど限りあるとは言え、当時最先端の技術に支えられている。つまり、最高の技術と文化の象徴でもある。
東京藝術大学の最新の科学分析技術と3D、ICTなどのテクノロジーそして高岡、南砺の日本の伝統技術の協働による今回の釈迦三尊像再現はその意味において私たちの祖である古代人の思いと我が国の文化の息吹をも現代に再生するものである。この実現は未来が古代の思いを叶えるものだということを告げている。